感情移入のし過ぎに要注意
感情移入は他者理解には大切な要素
今日のテーマは「感情移入」について。感情移入は、コミュニケーションにおいては大切な要素でもあります。
これが出来ると、他の人の痛みを疑似体験したような感じになり、感情を共有でき、相手を理解するのにはとても大切な要素と言えます。
なので、これが全くできない人は、他の人の気持ちを理解しにくく、冷たい印象となるかもしれません。
それが良い悪い、ではなくです。
よく親が「相手の気持ちになって考えてみなさい」と子供に教えることがあります。大人は喜怒哀楽に関して、子供よりは経験が多いので、感情移入をしやすいといえるかもしれません。
そしてその教えから、子供は苦しい思いをしている人、悲しい思いをしている人の感情になりきって、自分も悲しんだり、「かわいそう」と思えるようになっていくことでしょう。
これは、他の人への優しい気持ちが育つので、とてもいいことです。
しかし、前置きが長くなりましたが、今日の記事は、「感情移入のし過ぎがよくない点」について記事にしたいと思います。
その人の問題はその人のもの
ビギナーコーチやビギナーカウンセラーの頃に、直面する問題の一つによく「感情移入のし過ぎ」というのがあります。
相手の苦しみをまるで自分のもののようにして、つい、自分も感情移入し過ぎて、悲しい気持ちにとらわれてしまうことがあるのではないでしょうか。
中には、同じように気分が沈み、自分の悩みでもないのに、まるで自分の悩みのように苦しみ、胸を痛めてしまう人もいます。
しかし、それらの感情には正しい間違いはないものの、ただ過剰で無駄なエネルギーの場合があります。冷たい言い方ですが、その人の問題はその人のもの。自分の問題ではない、ということです。
つまり、一緒にその感情になって問題や悩みを見てしまうと、同じ悩みや問題というフィルターの中で問題を見てしまい、違う視点を持つことも、客観的にもみることもできず、いいアドバイスもできません。
特に心優しい人は、本当に感情移入し過ぎて夜眠れなくなったり、胃が痛くなったりなど、自分の問題でもないのに、不眠にまでなってしまうことも・・・。
起きていることはその人自身の経験であることを思いに留めたいものです。
「ニュートラル」と「信じること」の重要性
感情移入は悪いことではありませんが、使い方を間違えると、相手の問題を増大させる恐れがあります。
一緒に感情的になってしまうと、相手の怒りを増大させたり、相手の悲しみをもっと深くさせたり、相手の苦しみが拡大していったりなど。
特に、カウンセラーやコーチの人はそれに気をつけなければならず、常にニュートラルを意識します。
相手が悲もうが苦しもうが、共感こそはしますが、同じような感情にならず、ニュートラルでいることで抽象度を上げた高い視点を持ち、客観的なフィードバックをすることができるからです。
そのような視点を誰かが持てますと、相手が思っていた問題はさほど問題ではなかった、ということを知ることができるものです。
そして、一緒に苦しまなくても、相手にはその問題を乗り越える力がある、ということを信じてあげることのほうが、きっと相手はその問題を乗り越えていくことでしょう。
私とあなたを区別する~それは誰の問題なのか?~
コーチングのスキルに「区別する」というのがあります。
それは誰の問題なのか?相手の問題か?自分の問題か?
その質問だけで、相手の問題ならば、立ち入らない、私が悩んでも解決しないどころか、悩みに一人でも多くフォーカスしたときに、その問題はますます大きくなるという危険性があるからです。
なので、心配したり、悩んだりするよりは現実的に解決する手段を講じたり、温かい気遣いを示したり、信じることや温かい祈りの気持ちを向けることのほうがずっと良いのです。
もちろん、愛する人々が苦しい目にあって、話を聞くときは涙が流れたり、感情的にそのとき怒ったりすることはありますが、それ以降は、何も自分が出来なければ祈るだけのときがほとんどです。
自分の問題でなければ何もすることが出来ません。だからこそ、ただただ、寄り添うことの重要性を知ることができます。
何事もバランスが大事
いかがでしたでしょうか。
あまりの感情移入をすることは、理性を失うばかりか、自分の持っているエネルギーを消耗させることになり兼ねません。
それよりは、ニュートラルであることにより、相手にも自分を見つめる機会を与えたり、冷静な見方をできるようにお手伝いしたほうが、お互いのためです。
「冷たくしろ」って言っているわけではなく、やはり、これまたバランスが必要なのでしょう。
人間関係において、感情移入は大切なもの。しかしながら、どの辺までがいいものなのかは、自分でも見極めることが大切なのです。